特殊な結晶構造や微細組織を持つ薄膜の創製とその高性能磁気デバイスへの応用
磁気センサーや磁気記録装置(ハードディスクドライブ)の性能は年々少しずつ向上していますが、飛躍的に性能を向上させるためには、これまで用いられてきた磁性材料薄膜の特性改善ではなく、これまで実現されてこなかった優れた特性を有する磁性材料を新たに創製してそれを適用することが有効です。
強磁性粒と非磁性マトリックスから成るグラニュラー構造の超常磁性薄膜は、強磁性材料では実現できない「印加する磁界の大きさに伴って磁化(≒N,Sの強さ)が大きくなる」という、特徴的な磁気特性を示しますが、磁化の絶対値が十分な大きさではありませんでした。非磁性マトリックス材料および薄膜作製手法を検討した結果、強磁性粒の微細化と高密度化を実現し、上記の特徴的な磁気特性を維持したまま、強磁性材料であるニッケルよりも高い磁化を導出することに成功しました。
準安定なα”構造を有するFe16N2は、極めて大きな磁化を持ちながら、磁気異方性(≒N,Sの安定性)も大きいという、従来の強磁性材料には無い特長を持ちますが、その複雑な結晶構造から薄膜の形成が困難でした。酸化物や窒化物の薄膜に適した作製手法(反応性パルスDCスパッタリング法:P-DC)を検討した結果、α”構造を有するFe16N2薄膜を形成することに成功しました。
創製に成功した上記の材料を、これまで無かった性能を有する磁気センサーや非常に高い記録密度を実現する磁気記録装置に応用する研究を現在行っています。
