表面のナノ構造を観察する力顕微鏡の研究
ナノメートルスケールの物質は、日常で触れられるサイズの物質などからは想像できないような素晴らしい特性を持っていることもあるため、顕微鏡を通して直接観察することでそれらを発掘し製品などに応用しようとする研究が数多く行われています。原子間力顕微鏡は、片持ち梁についた鋭い探針と表面間に働く力学的な力を検出し、物体表面の構造(凹凸)をナノスケールの分解能で可視化する顕微鏡です。表面との力によって片持ち梁の振動する周波数が変化することを利用して、力を高感度に計測しています。光学顕微鏡や電子顕微鏡と異なり、観察環境の制約を受けずに動作し、条件を整えれば、表面の原子配列も見えるという優れた特徴を有します。探針と表面の材料の組合せを変えれば、凹凸構造以外にも、表面の機械的、電気的、磁気的な性質のイメージングも可能です。
より高感度に力を計測するには片持ち梁をより効率よく振動させることが重要です。この研究では時計の基準振動に用いられている音叉型の水晶振動子が非常に優れた振動特性を持っていることを活かし、水晶振動子を用いた新しく高性能な原子間力顕微鏡を開発しています。微細化が進む電子・磁気デバイスやその材料の開発評価に役立てるとともに、未だ分かっていない表面構造の解明や、新しい特性の発掘を目指します。

