量子情報科学の研究

量子力学は20世紀前半に誕生して以来、微視的な物理現象を記述するための理論として発展を続け、物理学における重要な基礎理論となりました。最近では量子力学と情報科学が融合し量子情報科学と呼ばれる分野が急速に発展してきています。特に「量子重ね合わせ」や「量子もつれ状態」という量子力学特有の性質を応用して従来の古典計算機の能力を大幅に上回る量子コンピュータ(量子計算機)の研究も盛んに行われています。本コースにおいてもこのような量子情報科学の研究を進めています。

量子計算機:

量子もつれ:

2つの量子をあわせた合成系があるとき古典力学では説明できない相関が存在します

研究テーマ

・量子回路における量子もつれ非平衡ダイナミクス、観測誘起型量子相転移の研究

近年、Noisy Intermediate Scale Quantum Computer(NISQ)タイプの量子コンピュータの開発が急速に進んでいます。またそこに内装される量子回路の技術開発も急速に進んでいます。このような物理系において、量子測定操作、ランダム量子ゲート、デコヒーレンス効果を多キュービット系に作用させたとき、通常の物質系では発現しない特異な量子もつれを保持する量子多体状態を理論的に探求しています。

より具体的には多量子ビット(多体量子スピン系)を量子回路上に置き、様々な量子ゲートや量子測定(特に射影測定)行ったときに発現する量子エンタングルメントの非平衡ダイナミクス特性や量子測定の反作用によって起きる非平衡ダイナミクスの探求、さらには観測誘起型量子相転移を統計力学的な観点から研究しています。特に量子情報分野で発展してきたスタビライザー形式を用いたクリフォード型量子回路模型に興味をもって研究を進めています。​

トポロジカル秩序相およびノイズに強い量子メモリ相の研究

トポロジカル秩序相とよばれる量子多体論で研究されていた量子相がノイズに対しても堅牢な量子メモリとなることがわかってきています。その中でもトリックコード模型におけるトポロジカル秩序相とそのエンタングルメント特性の研究を行っています。さらに格子ゲージ理論に端を発するゲージ理論的模型において量子情報を埋め込む部分系コードについての理論的な研究を進めています。